< 目次 >
(1)HSコードとは
(2)輸出統計品目番号と輸入統計品目番号
(3)HSコードのいろいろ
(1)HSコードとは
”HSコード"と聞いて、「あぁ、あの番号のことね!」とすぐに思い浮かぶ人と、「HSコード、何それ……?」と思う人と、色々な人がいると思います。正しく理解している人もいれば、実はちょっと知ってる人でも結構誤解している部分もあるので、ここで”HSコード”の本質も踏まえて一つ一つ紹介していきたいと思います。
まずは、”HSコード”とは何か? 次の説明を見てみましょう。
質問:関税率表にあるHSコードについて教えてください。回答:「HSコード」は、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められたコード番号です。2016年7月現在、世界税関機構(WCO)が管理している同条約には、日本をはじめ153の国及びEUが加盟しています。また、非加盟国であってもHSコードを使用している国と地域があり、それらを含めると200以上の国と地域がHSコードを使用しています。(出典:日本貿易振興機構 貿易・投資相談Q&A)
ということで、”HSコード”とは、HS条約に基づいて定められたコード番号ということですね。また、この”HSコード”は日本語では”統計品目番号”と言われます。次の説明を見てみましょう。
統計品目番号(とうけいひんもくばんごう)とは、国際貿易商品の名称・分類を世界的に統一した6桁の品目番号で、関税・統計等に関して世界の主要国で使用されているものである。英語では、Harmonized System Code、略してH.S.Codeと呼ばれることが多い。HSコードは別名:Harmonized Code, Harmonized Commodity Description and Coding System、ハーモナイズド・コード、HTSUSA番号(Harmonized Tariff Schedule USA、米国での名称)。(出典:ウィキペディア 統計品目番号)
ということで、”HSコード”とはHS条約に基づいて定められたコード番号で、日本語では”統計品目番号”と言うことが分かりましたね。
では次は、”HSコード”とはどんな番号か? 次の説明を見てみましょう。
質問:関税率表にあるHSコードについて教えてください。回答:( 省略 )I. 概要( 省略 )HSコードは、あらゆる貿易対象品目を21の「部」(Section)に大分類し、6桁の数字で表します。6桁のうち、上2桁を類(Chapter)、類を含む上4桁を項(Heading)、項を含む上6桁を号(Sub-heading)といいます。HSの分類改訂は、時代の流れに沿ってほぼ5年ごとに見直しをすることが、当初から加盟国により合意されており、最新では2017年1月1日に改正されました。これにより、同日付けでわが国の関税率表なども分類が改正されました。(出典:日本貿易振興機構 貿易・投資相談Q&A)
ということで、”HSコード(統計品目番号)”は”6桁の数字”であることがわかりましたね。と、長々と講釈ばかりを垂れても分かりにくいので、とりあえず、実際の”6桁の数字”の”HSコード(統計品目番号)”を見てみましょう。例えば次のようなものです。
(出典:経済産業省ウェブサイト “EPA/FTA/投資協定”)
これらを見て、「HSコード、何それ……?」と思っていた人も、「あ、これなら見たことある! 知ってる!」っていう人もいるのではないでしょうか。図の真ん中あたりにある“8708.21”や“8708.30”、“8708.70”、これらが”6桁の数字”の”HSコード(統計品目番号)”です。
そこで、ちょっと忘れてはいけないのが、先の引用のところで”HSコードは、あらゆる貿易対象品目を21の「部」(Section)に大分類し”ってありましたが、もう少し詳しく説明すると、世の中のあらゆる物品を、まずは21の Section(部)に分けて、それらを97の Chapter(類)に分けて、それら分けたものに対して更にそれぞれ”6桁の数字”を用いて分類しています。それが次の表になります。
(出典:World Customs Organizationウェブサイト “HS Nomenclature 2017 edition”)
最後に“SECTION XXI”とある通り21の Section(部)に分けて、また、“97”とある通りそれらを97の Chapter(類)に分けて、例えば、87番目のChapter(類)を見ると、以下の通り、97の Chapter(類)に分けたものに対してそれぞれ”6桁の数字”を用いて分類していることが分かりますね。
(出典:World Customs Organizationウェブサイト “HS Nomenclature 2017 edition” – Chapter 87)
こんなの見せられると、かなりこんがらがってしまうと思いますが、例えば、以下の通り、さっき紹介した物品のHSコード“8708.21”や“8708.30”、“8708.70”と、87番目のChapter(類)の該当部分とを見比べると、HSコードの表に基づいてそれぞれの物品のHSコードをあてはめていることが分かりますね。
(出典:World Customs Organizationウェブサイト “HS Nomenclature 2017 edition” – Chapter 87)
そして、ここで思い出しておいてもらいたいのが、この”HSコード”とはHS条約に基づいて定められたコード番号なので、この”6桁の数字”は世界共通になるという点です。では、世界共通にならないものがあるのか? その点については、次から説明していきましょう。
(2)輸出統計品目番号と輸入統計品目番号
”HSコード(統計品目番号)”は”6桁の数字”で”世界共通”であることが分かったと思いますが、「そもそも、何のために使うものなの?」って思う人も多いと思います。ではまず、輸出入の通関手続きを思い出してみてください。3-2.輸出入申告価格で紹介した”輸出入通関手続”について改めて紹介してみます。
“通関(つうかん)とは、貿易において貨物を輸入及び輸出をしようとする者が、税関官署に対して、貨物の品名、種類、数量、価格などに関する事項を申告し、必要な検査を受けた後に、輸入の場合は関税など必要な税金を納入させ、税関から輸出入の許可を受ける手続き。”とありますが、物品を輸入及び輸出をしようとする者が、税関官署に対して、申告する事項の中の一つに“価格”があることが分かります。それを、一般的に“輸出入申告価格”と言います。イメージ図で示すと次の通りです。
貨物を輸入及び輸出をしようとする者が、税関官署に対して申告する事項の中の一つに貨物の品名がありますよね。実は、その品名を申告する際に、その品名にあてはまる”HSコード(統計品目番号)”も申告することになっています。その証拠が輸出入の申告をする時の書類に書かれています。次の図を見てみましょう。
(出典:税関ウェブサイト “輸出申告書” “輸入(納税)申告書”)
ちゃんと”品名”と”統計品目番号”の欄がありますよね。「じゃあ、品名と6桁のHSコード(統計品目番号)を申告すればいいんだね。」と思うかも知れませんが、正しいのですが実は100点満点ではありません。するとまた、「ん~、ど~ゆ~こと?」って思うかも知れませんが、実は日本の法律では、世界共通の6桁のHSコード(統計品目番号)に対し更に細分化していて、つまり、世界共通の6桁のHSコード(統計品目番号)に更に3桁の日本独自の番号を付けて合計9桁の番号にして分類しています。「いや~こりゃ参った……。」っていう声が聞こえてきそうですが、例えば、さっき紹介した物品の一つの乗用車のホイール“8708.70”の例で示すと、次の表の右側にある通り“8708.70.000”のように合計9桁の番号となります。
(出典:経済産業省ウェブサイト “EPA/FTA/投資協定”改)
そして、日本独自の9桁の統計品目番号は、輸出申告用のものと輸入申告用のものとでは異なります。つまり、日本独自の輸出申告用の9桁の統計品目番号と日本独自の輸入申告用の9桁の統計品目番号の大きく分けて2種類があります。その前者を”輸出統計品目番号”と言い、後者を”輸入統計品目番号”または”実行関税率番号”と言います。しかし、”輸出統計品目番号”と”輸入統計品目番号”が全く同じ場合もあれば異なる場合もあるので、そこも誤解を生じやすい点です。例えば、先程の乗用車のホイールの例で示すと次の通りとなります。”輸出統計品目番号”と”輸入統計品目番号”が異なることが分かりますよね。
(出典:税関ウェブサイト “輸出統計品目表” “輸入統計品目表(実行関税率表)”)
「更に……」と言うと「もうやめて!」という声が聞こえてきそうですが、輸出入の申告手続きを、先程紹介した“輸出申告書”又は“輸入(納税)申告書)ではなくて、”NACCS(ナックス)“という税関とのオンラインシステムを利用して申告する時には、9桁の”輸出統計品目番号”または”輸入統計品目番号”に更に1桁のNACCS申告用番号を付けて合計10桁の番号にする必要があります。このように言うと、もう頭の中が「#$%&=¥@+*」みたいになっている人もいるかも知れませんが、例えば、先程の乗用車のホイールで示すと次の通りとなります。でも、もう大丈夫ですよ、11桁以上はないですからね(笑)。
(出典:日本関税協会 実行関税率表 2019年版)
(3)HSコードのいろいろ
これまで紹介しましたように、”HSコード”と一言で言いましても、それを耳にする人の理解度に応じて、思い浮かべる数字が6桁であったり、9桁であったり、10桁であったり、9桁や10桁でも輸出入共通と思っていたりと、理解度が様々に異なり、実はその理解の差から生じる誤解や問題も多くあります。ということで、ここでは、それらの理解度を補足するようなよくあるQ&Aを6つ紹介しておきたいと思います。
- Q1.”HSコード” と ”輸出統計品目番号” ”輸入統計品目番号(実行関税率番号)” とは異なるものですか?
- A1.”HSコード”とはHS条約に基づいて定められた世界共通の6桁の番号のことで、”輸出統計品目番号”とは世界共通の6桁のHSコード(統計品目番号)に更に3桁の日本独自の番号を付けた9桁の番号のことで、”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”にも“輸出統計品目番号”と同様のことが言えますので、厳密に言うと、”HSコード”と”輸出統計品目番号・輸入統計品目番号(実行関税率番号)”は異なると言えます。しかし、一般的には、”輸出統計品目番号”も”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”も”HSコード”と呼ぶ場合がほとんどですので、混同されて正しく理解することが難しいのが現状です。ゆえに、”輸出統計品目番号を”HSコード”と呼びたい場合は、例えば、”日本のHSコード”のように、どの国のHSコードかを明確にしておいた方が分かりやすいかも知れません。
- Q2.同じ物品であれば、日本から輸出する時の”輸出統計品目番号”と、日本で輸入する時の”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”は同じになりますか?
- A2.同じ物品なら、”輸出統計品目番号”の上6桁と”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”の上6桁は同じになりますが、その6桁の後に日本独自で付けた3桁の番号は必ずしも同じになるとは限りません。それは(3)で説明した通りです。ゆえに、同じになる場合もあるし、同じにならない場合もあります。
- Q3.日本から海外へ物品を輸出した場合、日本から輸出した時の”HSコード”と、海外で輸入する時の”HSコード”は同じになりますか?
- A3.”HSコード”をHS条約に基づいて定められた世界共通の6桁の番号とした場合、輸出者が適正にHSコードを特定して輸出申告をして、輸入者も適正にHSコードを特定して輸入申告をしていれば、基本的には同じになるはずです。理由は、同一の物品なので、世界共通のHSコードが同じになるのは当然と考えるためです。しかし、6桁の後に追加される番号は世界各国によって異なります。
- Q4.日本から海外へ物品を輸出した場合、日本から輸出した時の”HSコード”と、海外で輸入する時の”HSコード”が異なっても、問題はありませんか?
- A4.A3の通り、同一物品であれば、基本的には、日本輸出時のHSコードと海外輸入時のHSコードが異なることはないはずですが、実際には異なるケースがあるんですよね。一般的な理由としては、輸出者又は輸入者のどちらかが適正にHSコードを特定していないためです。一方で、通関手続は各国の法律に基づいて行う行政手続きですので、日本輸出時に日本の輸出者が日本の税関へ日本の法律に基づいて適正に輸出申告をして許可を受け、海外輸入時には海外の輸入者がその国の税関へその国の法律に基づき適正に輸入申告をして許可を受けていれば、双方が特定したHSコードが異なっていたとしても、双方はそれぞれの立場で適正な通関手続をしたことにはなります。しかしながら、「なぜ同一物品なのに輸出側と輸入側でHSコードが異なったのか?」という疑問は残りますね。
- Q5.A4を受けて、同一物品なのに輸出者と輸入者の双方が双方の税関へ申告したHSコードが異なって許可を受けていた場合、国際的な問題として何らかの国際機関より指摘されたり罰せられたりしませんか?
- A5.答えを先に言うと、そのようなことはありません。双方が各立場において適正に手続きを行っていれば、特に問題はありません。しかしながら、直接関係する話ではありませんが、また、若干難しい話になりますが、日本の輸出者が自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)等におけるHSコードの特定や原産性の判定に誤りがあるにも関わらずその情報をもって特定原産地証明書を発行して、海外の輸入者がその特定原産地証明書をもってその国の税関へ輸入申告しようとした時に、その国の税関が「この特定原産地証明書は誤りじゃないか?」等と疑いを持った場合には、その国の税関は日本の経済産業省等に対して疑いに対する調査を求めることができ、すると日本の経済産業省等から日本の輸出者に対してその調査が来ます。
- Q6.基本的に、誰が、物品についての”輸出統計品目番号”や”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”を特定しないといけないのですか?
- A6.”輸出統計品目番号”や”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”を申告する人が特定することになるので輸出入者です。しかし、その一連の輸出入通関手続きを通関業者へ委託していたら、その通関業者が代行して特定することになります。
[ まとめ ]
- ”HSコード”とはHS条約に基づいて定められたコード番号で、日本語では”統計品目番号”と言う
”HSコード(統計品目番号)”は”6桁の数字”である
”HSコード”とはHS条約に基づいて定められたコード番号なので、この”6桁の数字”は世界共通になる - 世界共通の6桁のHSコード(統計品目番号)に更に3桁の日本独自の番号を付けて合計9桁の番号にして分類
日本独自の輸出申告用の9桁の統計品目番号と日本独自の輸入申告用の9桁の統計品目番号の大きく分けて2種類ある
前者を”輸出統計品目番号”と言い、後者を”輸入統計品目番号”または”実行関税率番号”と言う
”NACCS(ナックス)“という税関とのオンラインシステムを利用して申告する時には、9桁の”輸出統計品目番号”または”輸入統計品目番号”に更に1桁のNACCS申告用番号を付けて合計10桁の番号にする - 厳密に言うと、”HSコード”と”輸出統計品目番号・輸入統計品目番号(実行関税率番号)”は異なる
日本から輸出する時の”輸出統計品目番号”と、日本で輸入する時の”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”は同じになる場合もあるし、同じにならない場合もある
日本から輸出した時の”HSコード”と、海外で輸入する時の”HSコード”は、輸出者が適正にHSコードを特定して輸出申告をして、輸入者も適正にHSコードを特定して輸入申告をしていれば、基本的には同じになる
同一物品に対し輸出者と輸入者の双方が各立場において適正に手続きを行っていれば、双方が特定したHSコードが異なっていたとしても、双方はそれぞれの立場で適正な通関手続をしたことにはなり、特に問題はない
物品についての”輸出統計品目番号”や”輸入統計品目番号(実行関税率番号)”は輸出入者が特定する(輸出入通関手続きを通関業者へ委託していたら、その通関業者が代行して特定する)
以上