< 目次 >
(1)原産地証明書
(2)原産地証明書の種類
(3)輸入者・輸出者の視点からみた原産地証明書


(1)原産地証明書

 “原産地証明書”という言葉は結構聞いたことがあると思いますが、実際、実務で取り扱っている人の中でも、何のために使われているのか漠然としか分かっていなかったり、そもそも何のために必要なのか全然見当もつかない人もいるかと思いますので、ここで改めて一つのテーマとして取り上げました。ところで、2-4.関税では、“原産地証明書”について次のように紹介しました。

まずは、“特恵税率”の適用要件から紹介します。では、“特恵税率”とは? 前のページで紹介しましたね。改めておさらいしましょう。

(1)法律に基づいて定められている税率
特恵税率:開発途上国・地域を支援する観点から、開発途上国・地域からの輸入品に対し、原産地証明書の提出等の条件を満たすことにより適用される税率です。最恵国待遇の例外として、実行税率(国定税率(特恵税率及び簡易税率を除く。)と協定税率のいずれか低い税率)以下に設定されています。
(出典:税関ウェブサイト ”関税率の種類”)

ということで、“法律に基づいて定められている税率”の一つの“特恵税率”ですが、“特恵税率”とは、もう少し分かりやすく言うと、ある特定の開発途上国からの指定された貨物を輸入する際、原産地証明書をもってその開発途上国原産の貨物であることを証明するなどの条件を満たすことで適用できる税率、ということになります。
(中略)
と、このように説明しても、やはり結構難しいのですが、要するに、少し語弊はありますがより分かりやすく言うと、ある特定の開発途上国からの指定された貨物であることを原産地証明書を以って証明できれば関税を安くすることができるということで、それが“特恵税率”の適用要件です。

ということで、“原産地証明書”とは、輸入国における輸入者が輸入貨物の関税を安くする時に必要になるものの一つでしたよね。それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。


(2)原産地証明書の種類

 まずは、次の説明を見てみましょう。

原産地証明とは
 原産地証明書には、輸出者自身が証明しているもの(自己証明)のほか、その真実性を保証するために、貿易当事者以外の第3者である輸出地の商工会議所、もしくは官庁、輸出国所在の輸入国領事館などが証明する書類(第3者証明)があります。
 ここでは東京商工会議所の発給する原産地証明書についてご案内いたします。
※ 輸出者自身が原産地を証明し、発行する私製の原産地証明書の認証は「サイン証明」にて承ります。
※ 日本商工会議所発行の「第一種特定原産地証明書」については下記の<特定原産地証明書>をご覧ください。
 原産地証明書は、輸入者からの依頼や、契約書、L/Cなどの求めにより必要となる場合がありますが、その目的は「貨物の原産地、つまり貿易取引される輸出品や輸入品の国籍を証明すること」です。
 原則として申請期間は、輸送手段の詳細が確定してから船積みまでとなります。船積み日から6カ月以内であれば通常どおり申請できますが、船積み後6カ月を超え1年以内の場合は別途典拠資料が必要です。船積み後1年を超えた場合は、証明書を発給できませんので、ご注意ください。
<特定原産地証明書>
 「第一種特定原産地証明書」とは、経済連携協定(EPA)に基づく特恵関税の適用を目的として日本商工会議所により発給される証明書です。各地商工会議所が発給する原産地証明書(”一般の原産地証明書”と呼ばれる)とは異なりますので、あらかじめ輸入地にて必要となる証明書の種類をよくご確認のうえ、申請をお願いいたします。第一種特定原産地証明書に関する詳しい内容はこちらをご確認ください。
 日本商工会議所:EPAに基づく特定原産地証明書発給事業
 日シンガポール経済連携協定に基づく特恵(日本産)原産地証明書のうち、ビール等4品目に対する証明書に限り、一般の原産地証明書と同様に、各地商工会議所での発給を行っています。一般の原産地証明書と異なる要件が一部ございますので、東京商工会議所へご申請の際には、該当ページをよくご確認のうえ、お手続きください。
(出典:東京商工会議所ウェブサイト ”原産地証明書”)

ということで、いろいろ詳しく書いてありますが、とりえあえず、3種類の“原産地証明書”がありそうなことは、分かりましたでしょうか? まとめると次のようになります。

  1. 輸出者自身が証明しているもの(自己証明)
  2. 貿易当事者以外の第3者である輸出地の商工会議所、もしくは官庁、輸出国所在の輸入国領事館などが証明する書類(第3者証明)
    → 各地商工会議所が発給する原産地証明書(”一般の原産地証明書”と呼ばれる)
  3. 経済連携協定(EPA)に基づく特恵関税の適用を目的として日本商工会議所により発給される証明書(「第一種特定原産地証明書」)

1については、例えば、製造企業などが、自社製品について、自社の責任をもって原産地(原産国)を証明しているもののことで、基本的には、何かの法令に基づいて作成している訳でもなく、法令で決まった様式がある訳でもなく、作成が法令で義務付けられている訳でもなく、製造企業などが、一般的な製造責任の観点より自主的に作成していることがほとんどです。1については理解しやすいと思いますが、実はややこしいのが2と3です。両方共、商工会議所が発給するのに、なぜわざわざ2つに分けているのか? 要は、それぞれの原産地証明書の役割が異なるので分けられているのですが、そこをもう少し詳しく見ていきましょう。

原産地証明書の種類
質問:一般的に原産地証明書といわれるものと、特定原産地証明書ではどのような違いがあるのでしょうか。
回答:原産地証明書には大きく分けて2種類あります。一般に原産地証明書といわれるものは、貨物の原産地を証明するためのもので、1. 輸入国の法律・規則に基づく要請、2. 契約や信用状で指定がある場合に提出します。日本では各地の商工会議所が発行機関とされています。この原産地証明書を発行するための判断基準は、関税法施行令、関税法施行規則、関税法基本通達に定められた原産地認定基準が用いられます。一方、特定原産地証明書とは日本が締約する経済連携協定に基づくもので、協定によって定められた特恵関税の適用を目的としているもので、日本商工会議所が唯一の指定発給機関です。協定ごとに異なる原産地規則に照らし合わせ、それぞれの協定に基づく様式で発給されます。これまでに日本は次の国・地域と経済連携協定を締結済みです(2017年9月現在)。シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル
なお、特定原産地証明書には、協定により次の2種類があります。
1. 第一種特定原産地証明書(日本商工会議所が発給)
2. 第二種特定原産地証明書(経済産業大臣から認定を受けた認定輸出者が自ら作成)
このほかに、一般特恵関税適用のための原産地証明書(Form A)があります。これはUNCTADで開発途上国の経済発展の促進を目的として合意された制度の枠組みで、日本は開発途上国に対して供与する側で、日本の原産品には適用されません。したがって、日本では発給されていません。開発途上国から輸入する際に特恵関税が設定されている品目に関し、輸出国の発給機関で発給を受け、日本の税関に提出すれば一般特恵関税の適用を受けられます。
(出展:JETROウェブサイト ”原産地証明書の種類”)

ということで、“一般の原産地証明書”と“特定原産地証明書”には、比較すると次のような違いがあることが分かります。

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あと、上の緑の引用部分では、“特定原産地証明書”には”第一種”があったり”第二種”があったり、他に“Form A”と呼ばれるものがあったりと、更にややこしいことが書いてありますが、まずは、基本となる“一般の原産地証明書”と“特定原産地証明書”の違いについて理解できれば応用的な内容も理解できるでしょう。

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(出典:東京商工会議所ウェブサイト “原産地証明:証明書の記載方法“ ※一般の原産地証明書)

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(出典:JETROウェブサイト “原産地証明書発給手続きと義務” ※特定原産地証明書)

それと、もう一つ、この原産地証明書の理解をややこしくしているのが、“輸出者の視点からみた原産地証明書”と“輸入者の視点からみた原産地証明書”とで原産地証明書に対する意味合いや取り組み方が異なる点です。では、どのように異なるのでしょうか? 次から紹介していきます。


(3)輸入者・輸出者の視点からみた原産地証明書

 これから使う“原産地証明書”という言葉は、“一般の原産地証明書”と“特定原産地証明書”の総称として使う言葉ですが、まずは、“輸入者の視点からみた原産地証明書”について紹介します。これはもう、なんとなく気付いていると思いますが、“原産地証明書”とは、輸入国における輸入者が輸入貨物の関税を安くする時に必要になるものの一つですので、輸入者の視点からみた原産地証明書とは、輸入貨物の関税を安くするために必要なものですよね。では、具体的にどうやって輸入貨物の関税を安くするのかというと、例えば、次のイメージ図の場合、輸入国の輸入者が、輸入国の税関に対し、輸入貨物についての輸入納税申告を行う際に、原産地証明書を提出することで、より安い関税率が適用されて実際の関税額が安くなる、という流れになります。

importer

だから、輸入者がどの関税率を適用したいかで、どの原産地証明書が必要になるかが変わるので、どの原産地証明書が必要なのかを輸出者に伝えて用意してもらう必要があります。尚、そのような輸入者と輸出者におけるやりとりは、輸入者が買手として、輸出者が売手として、その売手と買手との貿易取引における取引内容の一つなので、取引が開始される前にしっかりと取り決めて、つまり、買手である輸入者は、売手である輸出者に対して、どの原産地証明書が必要なのかを正確に伝えて遅滞なく用意してもらう必要があります。ここがうまく伝えられていないと、輸出者はどの原産地証明書を用意すればよいか分からなくなってしまいます。

 次に、“輸出者の視点からみた原産地証明書”について紹介します。輸出者にとっては、関税が安くなることはないのであまり関心がないのが般的ですが、上述の通り、輸出者は原産地証明書を用意する側ですので、輸出者の視点からみた原産地証明書とは、輸出に伴い用意する必要があるものということになりますよね。

exporter

だから、繰り返しになりますが、輸入者がどの関税率を適用したいかで、どの原産地証明書が必要になるかが変わりますので、どの原産地証明書が必要なのかを輸入者から聞いて用意する必要があります。尚、そのような輸出者と輸入者におけるやりとりは、輸出者が売手として、輸入者が買手として、その売手と買手との貿易取引における取引内容の一つなので、取引が開始される前にしっかりと取り決めて、つまり、 売手である輸出者は、買手である輸入者より、どの原産地証明書が必要なのかを正確に聞いて遅滞なく用意する必要があります。ここがうまく聞けていないと、どの原産地証明書を用意すればよいか全く分からなくて、身近にいる輸出入に詳しそうな人に聞いたり、いつも依頼している業者に相談したりして、でも、それらの人たちは輸入者じゃないから、結局どの原産地証明書を用意すればよいか分からないままで途方にくれる、みたいな事態になりかねません。

ちなみに、輸出者によくある誤解として、輸出者が用意した原産地証明書は、その輸出者のいる輸出国にある税関に提出する必要はありませんからね。なぜなら “原産地証明書”とは輸入国における輸入者が輸入貨物の関税を安くする時に必要になるものの一つなので。一般的には、輸出者が原産地証明書を用意した後は、輸入者に対して国際宅配便などで原産地証明書の原本を送ることになります。

補足として、近年、日本とオーストラリア、及び、日本とヨーロッパとの経済連携協定(EPA)においては、原産地の証明方法について、指定発給機関が発給した特定原産地証明書ではなく、貨物の生産者や輸出者、輸入者自身で原産地を証明できるルールになりました。具体的には、貨物の生産者や輸出者、輸入者のいずれかの者が“原産品申告書”またはそれに準ずるものを用意して、これまでの特定原産地証明書の代わりのものとして用いることになります。この点は応用的な内容となります。

また最後に、“原産地証明書”とは、輸入国における輸入者が輸入貨物の関税を安くする時に必要になるものの一つですので、その管理にはしっかりしたものが求められます。次のように、輸入国政府からの原産性の確認要請があることがありますので注意しましょう。

[Q32] 輸入国政府からの確認要請とはどのようなものですか。
輸入国政府(税関)は、輸入通関時にEPA税率を適用するかどうかを決定するため、提出された特定原産地証明書が真正のものかどうか、また、特定原産地証明書に記載されている産品が特定原産品であるか否かの確認の要請を輸出国政府に対して行うことができます。仮に我が国が輸入国政府から確認の要請を受けた場合、経済産業省又は経済産業省から要請を受けた日本商工会議所が必要な確認を行うことになります。なお、日メキシコEPA及び日オーストラリアEPAに限っては、輸入国政府(税関)が、これと並行して、輸出者又は生産者にも確認の要請に係る連絡をすることができることになっています。また、輸入国政府は、必要に応じて、輸入国政府の立会いの下で輸出国政府が産品の輸出者や生産者の施設を訪問し、特定原産品であるか否かに関する情報を収集した上で、輸入国政府に提供することを輸出国政府に要請することができることになっています。
(出典:経済産業省ウェブサイト “原産地証明 よくある質問(Q&A)”)


[ まとめ ]
  • “原産地証明書”とは、輸入国における輸入者が輸入貨物の関税を安くする時に必要になるものの一つ
  • 1.輸出者自身が証明しているもの(自己証明)
    2.貿易当事者以外の第3者である輸出地の商工会議所、もしくは官庁、輸出国所在の輸入国領事館などが証明する書類(第3者証明)
    → 各地商工会議所が発給する原産地証明書(”一般の原産地証明書”と呼ばれる)
    3.経済連携協定(EPA)に基づく特恵関税の適用を目的として日本商工会議所により発給される証明書(「第一種特定原産地証明書」)
  • 買手である輸入者は、売手である輸出者に対して、どの原産地証明書が必要なのかを正確に伝えて遅滞なく用意してもらう必要がある
    売手である輸出者は、買手である輸入者より、どの原産地証明書が必要なのかを正確に聞いて遅滞なく用意する必要がある


以上