< 目次 >
(1)安全保障貿易管理と通関手続き
(2)安全保障貿易管理と通関手続きの関係(他法令)
(3)他法令についての証明と確認


(1)安全保障貿易管理と通関手続き

 安全保障貿易管理については、安全保障貿易管理で以下の通り紹介しました。中でも下線部分について着目しておいてください。

(省略)
自社の物品を海外へ輸出する場合、その物品に対して“該非判定”を行い“リスト規制”で規制されていないかどうか確認をします。そして、リスト規制で規制されている場合には、経済産業大臣の許可を取得しなければ輸出することができません。
(中略)
自社の物品を海外へ輸出する場合、その物品の需要者及び用途に対して“用途・需要者確認”を行い“キャッチオール規制”で規制されていないかどうか確認をします。そして、キャッチオール規制で規制されている需要者及び用途である場合には、経済産業大臣の許可を取得しなければ輸出することができません。
(中略)
また、“該非判定”と“用途・需要者確認”とを合わせて“取引審査”と言い、“安全保障貿易管理”を簡潔に言うとこの“取引審査”を行うこととも言えます。
該非判定 + 用途・需要者確認 = 取引審査( =安全保障貿易管理 )
尚、この取引審査は、自社の物品を海外へ輸出する場合だけでなく、自社の技術を海外へ提供する場合にも行います。また、直接的に海外へ輸出及び提供する場合だけでなく、国内の取引相手を通して間接的に海外へ輸出及び提供される場合にも行います。

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また、通関手続きについては、通関手続きで以下の通り紹介しましたね。中でも下線部分について着目しておいてください。

輸出通関手続き …… 貿易において、貨物を輸出しようとする者が、税関官署に対して、貨物の内容(品名、種類、数量、価格などに関する事項)を申告し、必要な検査等を受けて、税関から輸出の許可を受ける手続き
輸入通関手続き …… 貿易において、貨物を輸入しようとする者が、税関官署に対して、貨物の内容(品名、種類、数量、価格などに関する事項)を申告し、必要な検査を受け、関税など必要な税金を納入し、税関から輸入の許可を受ける手続き
それをイメージ図にすると、次のような感じになります。

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それらをふまえて、安全保障貿易管理と通関手続きには何か関係があるのは分かりますよね? では、どのような関係があるのでしょうか? 次から紹介していきましょう。


(2)安全保障貿易管理と通関手続きの関係(他法令)

 安全保障貿易管理と通関手続きの関係を正しく知るには、“他法令(たほうれい)”について知る必要があります。他法令では、次のように紹介しましたね。ここも、下線部分について着目しておいてください。

つまり、貨物を輸出する場合、輸出通関手続きをして、関税関係法令における許可を受けなければ輸出ができませんが、その貨物が関税関係法令以外の法令(他法令)における許可等が必要な場合は、まず他法令における許可等を受けていないと、関税関係法令における許可を受けられない、ということです。イメージ図にすると、次のようなものになります。

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具体例を挙げるとするならば、ワシントン条約で絶滅の恐れのある野生動植物として規制されている象牙があります。規制に該当する象牙を輸出する際には、まずは該当法令である“外国為替及び外国貿易法”における輸出の許可等を該当省庁である“経済産業省”より受ける必要があります。一方、税関は、“経済産業省”からの“外国為替及び外国貿易法”における輸出の許可等がなければ、輸出通関手続き自体を進めることができません。

そこで、具体例の“ワシントン条約で絶滅の恐れのある野生動植物として規制されている象牙”を“リスト規制で規制されている物品”に置き換えると分かると思います。

つまり、リスト規制で規制されている物品を輸出する場合、輸出通関手続きをして、関税関係法令における許可を受けなければ輸出ができませんが、その物品が関税関係法令以外の法令(他法令)である外為法のリスト規制における経済産業大臣の許可が必要なので、まず外為法のリスト規制における許可を受けていないと、関税関係法令における許可を受けられない、ということになります。イメージ図にすると次のような感じになります。

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(3)他法令についての証明と確認

 他法令について、他法令よりもう少し法令の内容を見ておきましょう。下線部分について着目しておいてください。

5501 税関で確認する輸出関係他法令の概要(カスタムスアンサー)
 特定の貨物の輸出については、関税関係法令以外の法令により、許可、承認等が必要なものがあります。これらの法令の規制は、関税法の輸出の許可制と結びつけてその実効性が確保されることとなっています。したがって、貨物を輸出する場合、関税関係法令以外の法令により、輸出に関して許可・承認等を必要とする場合には、これらの他の法令の規定に基づいて許可・承認等を受けて、輸出申告又は当該申告に係る審査又は検査の際にその旨を税関に証明して確認を受けなければ輸出は許可されません。(関税法第70条、関税法基本通達70-1-1)
(出典:税関ウェブサイト “税関で確認する輸出関係他法令の概要”)

下線部分では、“貨物を輸出する場合、関税関係法令以外の法令により、輸出に関して許可・承認等を必要とする場合には、これらの他の法令の規定に基づいて許可・承認等を受けて、輸出申告又は当該申告に係る審査又は検査の際にその旨を税関に証明して確認を受けなければ輸出は許可されません。”とありますよね。

では反対に、関税関係法令以外の法令により、輸出に関して許可・承認等を必要としない場合には、その旨を税関に証明して確認を受ける必要がないのかというとそうではなく、関税関係法令以外の法令により、輸出に関して許可・承認等を必要としない旨を税関に証明して確認を受ける必要があります。

下線部分を言い換えると、“貨物を輸出する場合、関税関係法令以外の法令により、輸出に関して許可・承認等を必要としない場合には、輸出申告又は当該申告に係る審査又は検査の際にその旨(輸出に関して許可・承認等を必要としない旨)を税関に証明して確認を受けなければ輸出は許可されない。”ということになります。(但し、関税関係法令以外の法令により、輸出に関して許可・承認等を必要としないことが、客観的に明らかな場合は、税関に証明して確認を受ける必要はありません。)

つまり、リスト規制で規制されていない物品を輸出する場合、その物品が関税関係法令以外の法令(他法令)である外為法のリスト規制で規制されていないので、外為法のリスト規制で規制されていないことを証明し税関の確認を受けないと、関税関係法令における許可を受けられない、ということになります。(但し、外為法のリスト規制で規制されていないことが、客観的に明らかな場合は、税関に証明して確認を受ける必要はありません。)

 そこで、“該非判定”が重要であることが分かってくるんですよね。“該非判定”、覚えているでしょうか? 安全保障貿易管理より少しおさらいしておきましょう。下線部分について着目しておいてください。

 まず1つ目に、自社の物品を海外へ輸出する場合、その物品の仕様が軍事転用の可能性が高いものとして外為法で規制されていないかどうか確認をします。その外為法の規制のことを“リスト規制”といい、リスト規制で規制されていないかどうか確認することを“該非判定”といいます。つまり、自社の物品を海外へ輸出する場合、その物品に対して“該非判定”を行い“リスト規制”で規制されていないかどうか確認をします。そして、リスト規制で規制されている場合には、経済産業大臣の許可を取得しなければ輸出することができません。

このように、リスト規制で規制されていないかどうか確認することを“該非判定”と言いましたよね。つまり、上の赤字部分をもう少し詳しく言い換えると、リスト規制で規制されていない物品を輸出する場合、その物品が関税関係法令以外の法令(他法令)である外為法のリスト規制で規制されていないので、外為法のリスト規制で規制されていないことを“該非判定”の結果等を以って証明し税関の確認を受けないと、関税関係法令における許可を受けられない、ということになります。実際、リスト規制で規制されていないものを輸出する際、規制されていないことを証明できないと、税関は輸出通関手続き自体を進めません

ゆえに、一般的には、モノを作る企業等は自社で取り扱うモノに対して“該非判定”を行い、その結果を示した“該非判定書(通称)”というものを用意していることがほとんどです。その企業自身が自社物品を輸出する場合には、“該非判定書”を税関へ提出してリスト規制で規制されていないことを証明します。また、その企業が自社物品を国内取引先に販売して国内取引先が輸出する場合には、国内取引先へ販売する際に“該非判定書”を提供することになります。

一方、経済産業省は、“該非判定書”に準ずるものを“非該当証明書”として、次のように紹介しています。

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(出典:経済産業省ウェブサイト “安全保障貿易管理”)

最後に、上の赤字部分の内容をイメージ図にすると次のような感じになります。

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< まとめ >
  • 自社の物品を海外へ輸出する場合、その物品に対して“該非判定”を行い“リスト規制”で規制されていないかどうか確認をします。そして、リスト規制で規制されている場合には、経済産業大臣の許可を取得しなければ輸出することができません。
    輸出通関手続き …… 貿易において、貨物を輸出しようとする者が、税関官署に対して、貨物の内容(品名、種類、数量、価格などに関する事項)を申告し、必要な検査等を受けて、税関から輸出の許可を受ける手続き
    輸入通関手続き …… 貿易において、貨物を輸入しようとする者が、税関官署に対して、貨物の内容(品名、種類、数量、価格などに関する事項)を申告し、必要な検査を受け、関税など必要な税金を納入し、税関から輸入の許可を受ける手続き
  • リスト規制で規制されている物品を輸出する場合、輸出通関手続きをして、関税関係法令における許可を受けなければ輸出ができませんが、その物品が関税関係法令以外の法令(他法令)である外為法のリスト規制における経済産業大臣の許可が必要なので、まず外為法のリスト規制における許可を受けていないと、関税関係法令における許可を受けられない
  • リスト規制で規制されていない物品を輸出する場合、その物品が関税関係法令以外の法令(他法令)である外為法のリスト規制で規制されていないので、外為法のリスト規制で規制されていないことを“該非判定”の結果等を以って証明し税関の確認を受けないと、関税関係法令における許可を受けられない


以上