< 目次 >
(1)クーリエとは
(2)フレイトフォワーダーとインテグレーター
(3)マニフェスト通関


(1)クーリエとは

 “クーリエ”という言葉については聞いたことがある人も多いかと思います。聞いたことがある人にとって“クーリエ”と聞いて思い浮かべるのは、やはり“DHL”や“FedEx”、“UPS”等のいわゆる“国際宅配便”だと思います。その理解に間違いはなく、“クーリエ”とは“国際宅配便”及びそれを取り扱う業者のこと指して言われることが一般的です。では改めて、次の説明を見てみましょう。

クーリエ
 クーリエ(英語: courier)は、本来は外交官業務の一環で、外交文書を本国と各国の大使館・公使館等の間、あるいは大使館・公使館相互間などで運搬する業務のこと。
 概要
 外交関係に関するウィーン条約では「外交伝書使」と呼称されている。英語における courier はフランス語から英語に入った言葉で、急使や飛脚 (runner) といった意味である。外交文書には機密文書も多く含まれることから、運搬業務に当たっては厳重に封印が施され "DIPLOMAT"(外交官)の文字が印刷された機内持ち込み可能な巾着袋「外交行嚢」(外交封印袋)を用いる。また、一般に外交特権の一種として、行嚢の中身に関しては税関などで確認を行われないことが認められている。 
 国際宅配便
 近年ではこれが転じ、「航空機を利用して海外へ書類や小口荷物を配達するサービス」を指すことが増えている。この場合は国際宅配便とも呼ばれている。一般的な航空貨物と異なり、荷送り人、荷受け人が輸出入の通関手続きを行う必要が無い。国際貿易関連の書類の多くは、このサービスを利用して発送されている。FedEx/UPS (米)、DHL (独)、TNTエクスプレス (蘭)などがその代表である。
(出典:ウィキペディア)

ということで、“クーリエ”とは“国際宅配便”や“小口貨物の国際航空輸送”という意味であることは分かったかと思います。

 ところで、“フレイトフォワーダー”という言葉を覚えていますか? まずは、2-1.国際輸送で紹介した内容を思い出してみましょう。

 では、貿易取引における売手が自ら国際輸送を行うのかというと、そうではありません。貿易取引における売手が国際輸送を生業(なりわい)とする国際輸送業者へ国際輸送を依頼することで、国際輸送業者によって国際輸送が行われます。ちなみに、その国際輸送業者とはどんな業者か言うと、例えば、”○○通運”や”△△エクスプレス”、”□□カーゴ”等の名前の業者です。それらのいくつかは聞いたことがありますよね。

しかしながら、実は一見、おかしな点があります。気付いていたでしょうか? 実は、それらの国際輸送業者は、国際輸送に不可欠な船舶や航空機を所有していないのです。驚きましたか? 変ですよね。でも、実はそうなんです。それらの国際輸送業者は、国際輸送に不可欠な船舶や航空機を所有していません。

じゃあ、国際輸送業者はどうやって国際輸送を行うのでしょうか? 基本的には船舶や航空機を所有せず、お金を払ってそれらを利用し国際輸送を行っています。また、そのようにお金を払って船舶や航空機を利用して国際輸送をことを生業(なりわい)いわゆるビジネスとし、そのようなビジネスは世界共通のビジネスでもあり、そのようなビジネスを行う国際輸送業者のことを日本の法律では”利用運送事業者”と言い、英語では”Freight Forwarder(フレイトフォワーダー)”と言われています。ちなみに、日本で利用運送事業を行うには、国土交通省より利用運送事業を行う許可を取得する必要があります。イメージ図にすると、次のようなものになります。

riyouunsoujigyosya

ということで、“フレイトフォワーダー(利用運送事業者)”とは“船舶や航空機を利用して国際輸送のビジネスを行う国際輸送業者“であると紹介しました。

それに対して、“クーリエ業者”とは“小口貨物の国際航空輸送を行う国際輸送業者“であると言うことができます。一方、“クーリエ業者”も国土交通省より利用運送事業を行う許可を取得していますが、フレイトフォワーダーのように船舶や航空機を利用せず、実は自社で航空機を所有し輸送しています。そのように、“自社の航空機を所有して国際輸送のビジネスを行う国際輸送業者”のことを一般的には“インテグレーター”と呼んでいます。よって、“クーリエ業者”とは“インテグレーター”と言い換えることができます。


(2)フレイトフォワーダーとインテグレーター

 フレイトフォワーダーとは船舶や航空機を利用して国際輸送のビジネスを行う国際輸送業者であるのに対し、インテグレーターとは自社の航空機を所有して国際輸送のビジネスを行う国際輸送業者であると紹介しました。まずは、双方の違いを以下のようにまとめておきましょう。

  • フレイトフォワーダー …… 船舶や航空機を利用して国際輸送のビジネスを行う国際輸送業者
  • インテグレーター(クーリエ業者) …… 自社の航空機を利用して小口貨物の国際航空輸送を行う業者

その他、貿易取引おける売手や買手等の利用者側からみた違いとしては、フレイトフォワーダーは大口貨物から中口貨物の海上・航空輸送及び比較的難しい通関手続きを得意とするのに対して、インテグレーター(クーリエ業者)は小口貨物の航空輸送及び比較的難しくない通関手続きを得意としています。“得意とする”とは、輸送スピードや品質、料金等の提供するサービスにメリットがあることを意味しています。

以上の違いを平均的なものとしてイメージ図にまとめると次のような感じになります。

forwarder_integrator


(3)マニフェスト通関

 (2)では、インテグレーター(クーリエ業者)は小口貨物の航空輸送及び比較的難しくない通関手続きを得意とする違いがあると紹介しましたが、インテグレーター(クーリエ業者)を利用したことのある人の中には、「知らないうちに届いていて、早くてビックリした。」なんてことはなかったでしょうか? 実際、結構あるんですね。なぜなら、インテグレーターの売りの一つに“スピード”があるためです。では、なぜインテグレーターはスピードのある国際輸送が可能なのでしょうか? 理由は、主なものとして2つあります。

 1つ目の理由は、(1)で紹介したように、自社で航空機を所有し輸送しているためです。自社でトラックを所有し集荷や配送等の陸送を行うことはもちろん、自社で航空機も所有していることで、集荷から配送まで一貫して取り扱うことができるため、全ての輸送を詳細に管理しスムースな輸送サービスを提供できます。

 2つ目の理由は、これも1つ目の理由に負けず劣らず主な理由で、“マニフェスト通関”ができるためです。“マニフェスト通関”とは、通関手続きの種類の一つで、一般的な通関手続きに比べて比較的簡単な通関手続きです。いくつかの条件はありますが、AWB(エアウェイビル)だけで通関手続きをすることができるため、その他に求められる書類がなくスムースな通関手続きを行うことができます。

尚、この“マニフェスト通関”ができる貨物については、次のように定義されています。

第8節 輸出マニフェスト通関申告手続
 システムを使用して関税法基本通達67-2-5(マニフェスト等による輸出申告)及び同67-2-6(マニフェスト等による申告手続)に規定するマニフェスト等による輸出申告(以下この節において「輸出マニフェスト通関申告」という。)を行う場合は、この節の定めるところによる。
【対象貨物】
航空貨物混載業者が扱う貨物で、次の条件を全て満たす貨物。
  1. HAWBに基づく貨物であって、一つの混載貨物運送状の価格が20万円以下のもの
  2. 関税法第70条第1項又は第2項に規定する他法令の証明又は確認を要しないもの
  3. 輸出を条件とした関税等の減免戻税の対象とならないもの
  4. イラン、イラク又は北朝鮮を仕向地としないもの
第6節 輸入マニフェスト通関申告
 システムを使用して関税基本通達67-4-6(マニフェスト等による輸入申告)及び67-4-7(マニフェスト等による申告手続)に規定するマニフェスト等による輸入申告(以下この節において「輸入マニフェスト通関申告」という。)を行う場合は、この節の定めるところによる。
【対象貨物】
航空貨物混載業者が扱う貨物で、次の条件を全て満たす貨物。
  1. HAWBに基づく貨物であって、一つのHAWBに係る貨物について関税定率法第14条18号(無条件免税)の規定が適用されるもの(課税価格の合計額が1万円以下であり、かつ、関税定率法施行令第16条の3(関税を免除することを適当としない物品の指定)に指定される品目に該当しないもの。)。
  2. 消費税以外の内国消費税の課税対象とならないもの。
  3. 関税法第70条第1項又は第2項(証明又は確認)に規定する他法令の証明又は確認を要しないもの。
  4. 関税法第71条第1項(原産地を偽った表示等がされている貨物の輸入)に規定する原産地虚偽又は誤認表示がなされていないもの。
(出典:NACCS掲示板)

但し、“マニフェスト通関”ができない貨物については、インテグレーター(クーリエ業者)であっても一般的な通関手続きをする必要があります。

(3)の説明ではインテグレーター(クーリエ業者)がフレイトフォワーダーよりも優れている印象を持った人もいるかも知れませんが、双方の違いは(2)で紹介した通りで、自分がどのような国際輸送を求めるかに応じて、フレイトフォワーダーとインテグレーター(クーリエ業者)を使い分けられればよいかと思います。


< まとめ >
  • “クーリエ”とは“国際宅配便”や“小口貨物の国際航空輸送”という意味
    “クーリエ業者”とは“小口貨物の国際航空輸送を行う国際輸送業者“である
    “自社の航空機を所有して国際輸送のビジネスを行う国際輸送業者”のことを一般的には“インテグレーター”と呼ぶ
    “クーリエ業者”とは“インテグレーター”と言い換えることができる
  • フレイトフォワーダーは大口貨物から中口貨物の海上・航空輸送及び比較的難しい通関手続きを得意とする
    インテグレーター(クーリエ業者)は小口貨物の航空輸送及び比較的難しくない通関手続きを得意とする
  • “マニフェスト通関”とは、通関手続きの種類の一つで、一般的な通関手続きに比べて比較的簡単な通関手続き
    “マニフェスト通関”ができない貨物については、インテグレーター(クーリエ業者)であっても一般的な通関手続きをする必要がある


以上