< 目次 >
(1)貿易取引の流れ
(2)貿易取引の3つの流れ
(3)貿易取引の大元


(1)貿易取引の流れ

 貿易取引とはある国の売手と別の国の買手との間で行われる物品売買ですが、その貿易取引には流れがあり、一般的には次のようなものと言われています。

貿易の流れ
 貿易取引は、一般的には次の様な流れが考えられます。
  契約段階 ●取引先探し
       ●関連法規確認
       ●契約締結
  輸送段階 ●輸送手段確保
       ●貨物搬入
       ●通関手続き
       ●船積み
  決裁段階 ●代金決裁
       ●貨物引取
   ※ここで説明しているのは一般的な例であり、
    実際のビジネスの流れはこれと異なる場合があります。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト “貿易の流れ”)

貿易取引は、平たく言うと、ある国の売手と別の国の買手との間でモノの売り買いの約束をしてその約束通りに事を進めることなので、上の貿易取引の流れでは、契約段階でモノの売り買いの約束をして、輸送段階と決裁段階でその約束通りに事を進めることになりますね。

更に、改めて貿易取引の流れを見ると、実際、契約段階に精通するのは主に貿易商社であったり、輸送段階に精通するのは主に国際輸送業者や船舶・航空会社、決裁段階に精通するのは主に銀行というように見ることもできます。何を言いたいのかというと、全ての段階に精通する企業や団体等は世間一般ではほとんど見当たらず、このような点からも、貿易取引が如何に幅が広く奥が深いことが伺えるでしょう。


(2)貿易取引の3つの流れ

 幅が広く奥が深い貿易取引の流れでも、視点を変えて見ると、実は主となる3つの流れがあり、この3つの流れを把握することが貿易取引の全体的な流れを理解するコツでもあると言われています。その3つの流れとは、“モノの流れ”と“カネの流れ”、“カミの流れ”であり、貿易取引を人間の身体に例えるとその血液にあたるのがこれら3つの流れになります。ゆえに、この3つの流れがスムースに流れないと、貿易取引に支障が生じることになります。では、それぞれの説明を見てみましょう。

まずは、”モノの流れ”について。

貿易取引の3つの流れ
 貿易取引は、モノ・カネ・カミの3つの流れでとらえると、理解しやすくなります。
(1)モノの流れ
 商品は、売手から買手の方向に流れます。たとえば、鉱工業品や原油などの原料類はその生産国から加工工場のある輸入国へと輸送され、機械や一般雑貨などの製品類は製造国から消費国へと運ばれます。貿易の輸送には、海上輸送、航空輸送、陸上輸送の手段がありますが、製品特性に適した輸送手段を手配することが実務的に重要な事項となります。また、輸送途上でモノが国境を越えるときには、輸出入通関の実務が発生します。
  • 海上輸送 … 海上輸送は、船を用いて行う輸送のことです。船には一般的な貨物船のほかに、コンテナ化された貨物を運ぶコンテナ船や液体貨物を運ぶタン力などの種類があり、貨物の性状に応じて使われています。輸送ルートも湾だけでなく、河川や運河も広く利用されています。
  • 航空輸送 … 航空輸送は、飛行機を用いて行う輸送のことです。飛行機には、旅客機と貨物専用機かあり、ともに航空輸送に使われます。旅客機は、胴体下の部分のスペースに貨物が積み込まれます。一方、貨物専用機は胴体全部を貨物スペースとして利用されます。
  • 陸上輸送 … 陸上輸送には、鉄道の貨車やトラックが用いられます。たとえば、コンテナ輸送の場合は、コンテナごとにトレーラーで牽引して輸送します。
(出典:かんき出版 ”はじめての人の貿易 入門塾”)

”モノの流れ”とは”物の流れ”のことで、モノとは貿易取引で取引される物のことです。その物(モノ)の流れは、売手から買手の方向に流れます。また、売手から買手に物(モノ)を届ける手段には海上・航空・陸上輸送等の輸送手段があります。尚、国境を越えることになりますので、国境を越える際には輸出入の通関手続きが必要となります。それをイメージ図にすると、次のようになります。

monononagare

次に、”カネの流れ”について。まずは次の説明を見てみましょう。

(2)カネの流れ
 お金は、買手から売手の方向に流れます。多額の現金を持ち歩くことは危険です。そのため、貿易取引では通常は銀行を介して代金の決済を行います。このように、現金の移動をともなわずにお金を移動させるしくみを「為替」と呼び、輸入国では買手が銀行に代金を支払い、輸出国では売手が銀行から代金を受け取ります。輸入国と輸出国の銀行間の決済でも現金は移動せず、銀行がおたがいに保有している口座の額を増減させて決済します。
  • 順為替 … 順為替は、お金を支払う側が銀行で手続きして送金する方法で、「送金為替」とも呼ばれます。貿易取引では、買手が輸入地の銀行に対して送金を依頼します。輸入地の銀行は輸出地にある銀行との間で決済し、売手は輸出地の銀行からお金を受け取ります。
  • 逆為替 … 逆為替は、お金を受け取る側が銀行に手続きをしてお金を取り立てる方法で、「取立為替」とも呼ばれます。売手は「為替手形」という買い手に対する支払指示書を用いて、輸出地の銀行にお金の取り立てを依頼します。輸出地の銀行は、為替手形を輸入地の銀行に送り、買手からの取り立てを依頼します。買手からのお金の取り立てが完了後、銀行間の決済が行われ、輸出地の銀行は売手にお金を支払います。貿易取引では、為替手形に船積書類をセットにした「荷為替手形」が広く使われています。
(出典:かんき出版 ”はじめての人の貿易 入門塾”)

”カネの流れ”とは”金の流れ”のことで、カネとは貿易取引で支払われる代金のことをいいます。その金(カネ)の流れは、買手から売手の方向に流れます。また、買手から売手に代金を支払うと言っても、通常は銀行を介して代金の支払いが行われます。尚、銀行を介して代金の支払いが行われる際は、実際には現金の移動なく決済がなされ、それを「為替(かわせ)」といいます。それをイメージ図にすると、次のようになります。

kanenonagare

では、最後に、”カミの流れ”について。説明を見てみましょう。

(3)カミの流れ
 書類は、基本的に売手から買手に流れます。書類は、モノや力ネの流れの各段階で、用途に応じて作成されます。主な書類としては、売手から買手に対する代金請求や船積みの詳細を記載したインボイス、船積みの証拠書類である船荷証券が挙げられます。これらの書類は、売手から買手に直接送られたり、銀行を経由して送られます
  • 書類の機能 … 貿易手続きの多くは、書面によって行われます。その目的は、権利や指示、許認可、証明、確認、通知、保証などさまざまです。たとえば、契約とおりの商品を売手が船積みしたことを証明する一群の書類は、「船積書類」と呼ばれます。船積書類の中核をなす「船荷証券」は、船積みされた貨物の引渡請求権を持つ有価証券なので、所有権を売手から買手に移転させることに使われます。
  • 船積書類の機能 … 船積書類は売手から買手に、直接または銀行を経由して送られます。銀行経由の場合は、荷為替手形の一部として送られ、買手は銀行と手形決済を行うことと交換に船積書類を入手し、貨物を引き取ります。このように、船積書類は代金決済の道具として、貨物の代わりに流通する機能を持っています。
(出典:かんき出版 ”はじめての人の貿易 入門塾”)

”カミの流れ”とは”紙の流れ”のことで、紙とは貿易取引で取り扱われる書類のことをいいます。その紙(カミ)の流れは、売手から買手の方向に流れます。特に紙(カミ)、つまり、書類については、契約~輸送~決済段階の各段階に応じて、様々な書類が必要となります。中でもほぼ必要不可欠と思われるものが、インボイスや船荷証券等です。尚、貿易取引の内容により、銀行経由で書類が流れる場合もあります。それをイメージ図にすると、次のようになります。

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貿易取引の流れは、一般的に、契約~輸送~決裁段階という流れとなっていますが、その流れの中でも、“モノ(物)の流れ”と“カネ(金)の流れ”、“カミ(紙)の流れ”という3つの流れに分けて着目することで、貿易取引の流れをより深く把握することができます。


(3)貿易取引の大元

 貿易取引とはある国の売手と別の国の買手との間で行われる物品売買です。

貿易取引の流れを見ると、契約段階に精通するのは主に貿易商社、輸送段階に精通するのは主に国際輸送業者や船舶・航空会社、決裁段階に精通するのは主に銀行と見ることができます。

また、その流れの中でも、“モノ(物)の流れ”と“カネ(金)の流れ”、“カミ(紙)の流れ”という3つの流れに分けて着目することもできます。

そのように、貿易取引とは売手と買手との間でなされる物品売買ですが、たった一回の取引であっても、貿易商社や国際輸送業者、船舶・航空会社、銀行等、様々な登場人物が現れます。しかし、大元は売手と買手との間でモノの売り買いの約束をしたところにあります。

尚、売手や買手が企業等であれば、まずは実際に売買契約を結んだ売手と買手の担当者がいて、それを補佐する担当者や出荷手配を行う担当者等もいます。しかし、大元は売手企業等の担当者と買手企業等の担当者との間でモノの売り買いの約束をしたところにあります。

何を言いたいのかといいますと、たった一回の貿易取引であっても様々な登場人物が現れますが、あくまで主役は売手と買手であり、その中でも売手と買手の中の契約した人達です。その契約した人達の契約した内容の通り、その他の様々な登場人物が動くことになり、主役をサポートする準主役となります。

しかし、主役である売手と買手の契約がなければ、準主役であるその他様々な登場人物の仕事がないのは当然ですが、一方で、準主役であるその他様々な登場人物の働きがなければ、主役である売手と買手の貿易取引もなされません。

貿易取引を進めていく中で、何か問題等が生じた際には、まずはその貿易取引の大元である売手と買手の契約内容に立ち返ることで、問題解決の糸口が見え、自ずと問題解決の方向へ進むことが多くあります。

貿易取引には本当にあらゆる登場人物が現れますが、その大元を忘れずにいることで一つ一つの貿易取引をスムースに進められることになるでしょう。


[ まとめ ]
  • 貿易取引の流れでは、契約段階でモノの売り買いの約束をし、輸送段階と決裁段階でその約束通りに事を進めることになる。
  • 貿易取引には主な3つの流れとして、“モノ(物)の流れ”と“カネ(金)の流れ”、“カミ(紙)の流れ”がある。
  • 貿易取引を進めていく中で、何か問題等が生じた際には、まずはその貿易取引の大元である売手と買手の契約内容に立ち返ることで、問題解決の糸口が見え、自ずと問題解決の方向へ進むことが多くある。


以上



= 参考書籍 =

”はじめての人の貿易入門塾”(かんき出版)

はじめての人の貿易入門塾<改訂2版>