< 目次 >
(1)韓国への輸出規制の強化
(2)規制強化前後の違い
(3)メディアの偏向報道


(1)韓国への輸出規制の強化

 2019年の夏、韓国への輸出規制が強化され一大ニュースとなりました。具体的には、“韓国を「ホワイト国」から除外する”、“「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”等の旨の政令改正が、2019年8月2日に閣議決定され、同月28日に施行されました。また、その前後よりメディアで有ること無いことを含め様々な報道がなされ、日本にとって韓国はブラックな国の位置付けとなり、韓国へ輸出するものは全て何らかの許可を取らないと輸出できないような、それによって韓国経済が大打撃を受けてしまうようなイメージが出来上がりました。

< 経済産業省 ニュースリリース >
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(出典:経済産業省 安全保障貿易管理 ウェブサイト)

安全保障貿易管理(略称:輸出管理)を理解している人は、そのようなイメージが誤りであることは明らかなのですが、世間一般では安全保障貿易管理を理解している人はそう多くありませんので、どうしてもメディアでの報道でしか知る術がなく、その報道がかもし出すイメージを持ってしまいます(安全保障貿易管理については5-1.安全保障貿易管理をご覧ください。)。

今回、韓国への輸出規制が強化された内容は先述の通りですが、主なポイントは次の2点です。

  • “韓国を「ホワイト国」から除外する”
  • “「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”

では、これらの点がどう規制強化されたことになるのか? メディアでの報道によるイメージがどう誤りなのか? 次から紹介していきます。


(2)規制強化前後の違い

“韓国を「ホワイト国」から除外する”

 “韓国を「ホワイト国」から除外する”とは、韓国が「ホワイト国」から「非ホワイト国」に分類されたということです。

日本の輸出規制は外為法(外国為替及び外国貿易法)で定められていますが、その中では、世界の国々を「ホワイト国」と「非ホワイト国」に分けています。「ホワイト国」とは安全保障貿易管理を厳格に行っている国のことであり、主にアメリカやイギリス等の昔で言う“西側諸国”が顔を連ねています。それに対し、「非ホワイト国」とは「ホワイト国」以外の国で安全保障貿易管理を厳格に行っていない国のことで、厳格に行っていないと言っても水準はピンからキリまであるのですが、主に中国やロシア等の昔で言う“東側諸国”に始まり北朝鮮やイラン等が顔を連ねています。

日本から「ホワイト国」「非ホワイト国」問わず外国へ輸出規制品を輸出する場合は経済産業大臣の許可が必要です。しかし、輸出規制品以外においては、日本から「ホワイト国」へ輸出する場合は経済産業大臣の許可が不要であるのに対し、日本から「非ホワイト国」へ輸出する場合は経済産業大臣の許可が必要となる場合があります。

よって、日本から韓国へ輸出規制品を輸出する場合は経済産業大臣の許可が必要であることは規制強化前後でも変わりませんが、輸出規制品以外を輸出する場合、規制強化前は経済産業大臣の許可は不要でしたが、規制強化後は必要となる場合があるということになりました。また、“必要となる場合”というのは、例えば、韓国の輸出先の企業等が戦争やテロ等に加担している場合のこと。でも、一般常識的に考えて、そのような企業等と貿易取引を行うことはあまりなく、おすすめできるものではありませんよね。

尚、今回の規制強化に伴い、「ホワイト国」を「グループA」、「非ホワイト国」を「グループB」「グループC」「グループD」(B~Dはランク分け)という呼び方に変わり、韓国は「グループB」に分類されました。

< ホワイト国と非ホワイト国の通称を「グループA~D」の4段階に細分化 >
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(出典:日本経済新聞ウェブサイト)


“「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”

 “「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”とは、「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目の中で輸出規制品を韓国に輸出するには経済産業大臣の個別許可が必要ということです。

気付いた人もいるかも知れませんが、“3品目の中で輸出規制品”と表記しているのは、実は“3品目の中で輸出規制品以外”もあるためです。では、これら“3品目の中でも輸出規制品以外”を韓国に輸出する場合はというと個別許可は不要となります。尚、3品目の中において、輸出規制品とそうでない違いはというと、ある特定の基準を境に高性能(高品質)かどうかという違いにより、高性能だと輸出規制品になり、高性能でなければ輸出規制品以外となります。

また、気付いた人もいるかも知れませんが、“個別許可”と表記しているのは、“包括的な許可”もあるためです。規制強化前は、経済産業大臣の“包括的な許可”を取っていれば、ある一定期間、契約する度に“個別許可”を取らなくて済んでいたのですが、規制強化後は、これら3品目の中で輸出規制品を韓国に輸出する際には、経済産業大臣の“包括的な許可”を取ることができず、申請自体ができなくなりました。

よって、“3品目の中で輸出規制品以外”を韓国に輸出するのに個別許可が不要であることは規制強化前後でも変わりませんが、“3品目の中で輸出規制品”を韓国に輸出する場合、規制強化前は経済産業大臣の“包括的な許可”を取ることができましたが、規制強化後は契約する度(“輸出する度”ではない)に“個別許可”を取らなければならなくなりました。こう見ると、確かに規制は強化されましたが、輸出できなくなる訳ではなく、実務で手間が増えたという感じですよね。


(3)メディアの偏向報道

 平たい言葉で紹介したつもりですが、やはり分かりにくいですよね。なので、私自身、メディアが誤ったイメージをかもし出すのもよく分かります。ということで、改めてまとめておきましょう。

“韓国を「ホワイト国」から除外する”
  • 韓国が「ホワイト国」から「非ホワイト国」に分類されたということ
  • 日本から韓国へ輸出規制品を輸出する場合は経済産業大臣の許可が必要であることは規制強化前後でも変わらない
  • 輸出規制品以外を輸出する場合、規制強化前は経済産業大臣の許可は不要でだったが、規制強化後は必要となる場合(韓国の輸出先の企業等が戦争やテロ等に加担している企業等である場合)がある
    ⇒ 一般常識的に考えて、そのような企業等と貿易取引を行うことはあまりなく、おすすめできるものではない

“「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”
  • 「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目の中で輸出規制品を韓国に輸出するには経済産業大臣の個別許可が必要ということ
  • “3品目の中で輸出規制品以外”を韓国に輸出するのに個別許可が不要であることは規制強化前後でも変わらない
  • “3品目の中で輸出規制品”を韓国に輸出する場合、規制強化前は経済産業大臣の“包括的な許可”を取ることができたが、規制強化後は契約の度に“個別許可”を取らなければならない
    ⇒ 確かに規制は強化されたが、輸出できなくなる訳ではなく、実務で手間が増えたという感じ

そのような実情に対し、各メディアでは、次のような旨の偏向報道がなされました。

“韓国を「ホワイト国」から除外する”についての偏向報道
  • 韓国へ輸出するものは全て経済産業大臣の許可が必要(正:3品目の中で輸出規制品のみ必要)
  • 韓国企業等は全て戦争やテロ等に加担している企業等とみなし経済産業大臣の許可が必要(正:加担している事実が確認された場合に必要)
  • 韓国へ輸出するもの全てに軍事転用の可能性があると経済産業大臣の許可が必要(正:軍事転用の可能性が確認された場合に必要)

“「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”についての偏向報道
  • 韓国へ輸出するものは全ての品目が輸出禁止(正:3品目の中で輸出規制品のみ必要)
  • 韓国へ輸出する3品目の全てが輸出禁止(正:3品目の中で輸出規制品のみ必要)
  • 韓国へ輸出する度に個別許可が必要(正:輸出ではなく契約の度に必要)

あと、今回の規制強化が、WTOで問題となるような、禁輸、数量制限、差別的待遇等の通商問題との報道もなされていましたが、それも偏向報道であり、正しくは、世界の主要国が参加する4つの国際輸出管理レジーム合意や国連安保理1540号決議に基づく大量破壊兵器拡散防止、軍事転用防止のために輸出を管理する国際的な共通の取組み(安全保障貿易管理)に基づくものです。

規制強化(規制強化でも智恵ある官僚が法令改正を駆使し実害をできるだけ最小限に抑えたように感じる)はもとより、これらの偏向報道も含めて、日韓関係をこじらせたい意向を感じるのは私だけでしょうか? 日中韓の仲が悪くなれば得をするのはどこの国でしょうか? どの通貨でしょうか?


[ まとめ ]
  • “韓国を「ホワイト国」から除外する”、“「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」の3品目を韓国に輸出するには個別許可が必要”等の旨の政令改正が、2019年8月2日に閣議決定され、同月28日に施行された。
  • 日本から韓国へ輸出規制品を輸出する場合は経済産業大臣の許可が必要であることは規制強化前後でも変わらない。輸出規制品以外を輸出する場合、規制強化前は経済産業大臣の許可は不要だったが、規制強化後は必要となる場合がある。
    “3品目の中で輸出規制品以外”を韓国に輸出するのに個別許可が不要であることは規制強化前後でも変わらない。“3品目の中で輸出規制品”を韓国に輸出する場合、規制強化前は経済産業大臣の“包括的な許可”を取ることができたが、規制強化後は契約する度(“輸出する度”ではない)に“個別許可”を取らなければならない。
  • 今回の規制強化が、WTOで問題となるような、禁輸、数量制限、差別的待遇等の通商問題との報道もなされていたが、それも偏向報道であり、正しくは、世界の主要国が参加する4つの国際輸出管理レジーム合意や国連安保理1540号決議に基づく大量破壊兵器拡散防止、軍事転用防止のために輸出を管理する国際的な共通の取組み(安全保障貿易管理)に基づくもの。


以上