“車上渡し(しゃじょうわたし)”という言葉を聞いたことはありますでしょうか? その字の通り“車の上で渡す”という意味ですが、トラック等による陸上輸送における契約事項の一つです。

では、いきなりクイズです。例えば、あなたが仕事で重さが約200kgある機械を購入し、ある朝、それがトラックで配達されて来ました。では、その機械をトラックから積み下ろすのは誰がしないといけないでしょうか? トラックのドライバーでしょうか? それとも、あなたでしょうか?

答えは、“あなた”です。

「えーっ?!」とビックリした人もいるかも知れませんが、上のクイズの例において、積み下ろす責任については、基本的にはそのトラック輸送がどのような契約内容でなされたかに因ります。しかし、基本的に、トラック輸送の契約は“輸送だけ”の契約ですので、その前後に付随する積み込みや積み下ろし、搬出、搬入、設置等の作業の契約を含んでいないことがほとんどです。よって、上のクイズの場合、契約事項については述べていませんので、基本的に考えた場合、積み下ろしの契約は含まれていないと考え、“あなた”が積み下ろすことになります。そのように、車上で貨物を引き渡す契約のことを“車上渡し”契約と言います。イメージ図にすると次のようなものです。

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また、“車上渡し”に似た言葉で、“軒下渡し(のきしたわたし)”という言葉があります。字の通り“軒下で渡す”という意味ですが、これもトラック輸送における契約事項の一つです。これにはトラックからの積み下ろしの契約が含まれ、輸送先の軒下(玄関口等)で貨物を引き渡す契約のことを“軒下渡し”契約と言います。分かりやすい例で言うと、宅配便のように家の玄関で受け渡しすることです。イメージ図にすると次のようなものです。

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もう一つ、“置場渡し(おきばわたし)”という言葉もあります。字の通り“置場で渡す”という意味ですが、これもトラック輸送における契約事項の一つです。これには積み下ろしと指定場所への搬入の契約が含まれ、輸送先の置場(指定場所)で貨物を引き渡す契約のことを“置場渡し”契約と言います。分かりやすい例で言うと、冷蔵庫や洗濯機の設置(“取付”は含まない場合)のような受け渡しのことです。イメージ図にすると次のようなものです。

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そこで、よくある誤解というのが、もうなんとなく想像が付きますよね。例えば、先の例で言うと、荷受人の立場において、「玄関まで持ってきてくれる(軒下渡し)と思っていたのに、トラックから積み下ろしする(車上渡し)のをやらされた!」みたいな誤解ですよね。なので、手運びが難しいようなものを荷受けする場合には、事前に輸送契約の内容を確認して、その内容に応じた準備をしておく必要があります。

一方で、輸送契約が“車上渡し”になっていたとしても、トラックのドライバーが“軒下渡し”をしてくれる場合もあります。特に、トラックのドライバーにとって配達先がいつも配達するお得意様のような場合には、習慣的なサービスとして行うことが多くあります。但し、注意しなければならないのが、あくまで輸送契約は“車上渡し”なので、そのトラックのドライバーがトラックから貨物を積み下ろして玄関口まで持って行く間に貨物への破損や事故があった場合には、そのリスクは基本的には荷受側が負うことになります。つまり、荷受側は荷受側の責任の下、トラックのドライバーがサービスとして玄関口まで貨物を持って来てくれていると認識しておく必要があります。

以上は、貨物の配達及び荷受けにおける内容ですが、貨物の荷渡し及び引取りの際にも同様の考え方になります。貨物の荷渡し及び引取り契約が“車上渡し”であれば、貨物をトラックに積み込むのは荷渡し側が行う必要があります。また、“軒下渡し”についても、貨物をトラックに積み込むのは荷渡し側が行うのではありませんが、荷渡し側は貨物を玄関口に用意しておく必要があります。そして、“置場渡し”は、貨物を引取る側が、貨物が置かれている場所から引取りトラックに積み込む作業を行うことになります。

いずれにしても、手運びが難しいようなものを荷受けする場合には、事前に輸送契約の内容を確認して、その内容に応じた準備をしておく必要があります。

以上