“Ex Works”は皆さんよくご存知かと思います。貿易条件であるインコタームズの一つで“工場渡し”という条件ですね。改めて意味を確認しておきましょう。

EXW (Ex Works)
出荷工場渡し条件。売主は、売主の敷地(工場)で買主に商品を移転し、それ以降の運賃、保険料、リスクの一切は買主が負担する。
(出典:ウィキペディア)

では、何が誤解なのでしょうか? ここで、いきなりクイズです。“Ex Works”とは、どのように読むでしょうか? 次の三択から選んでください。

  1. イーエックスワークス
  2. イーエックスワーク
  3. エクスワークス

正解は “3” です。

なぜでしょうか? 理由はカンタンです。“Ex Works(ex-works)”は一つの英単語であり、発音が“エクスワークス”だからです。国際輸送業界でも、結構、“イーエックスワークス”と言う人を見ます。どうしても“イーエックス”と言いたいのであれば、“EXW”として“イーエックスダブリュ”と言えば間違いはありませんが、そのように言う人はあまり見ませんね。この誤解は単なる英単語の発音の誤りです。

ところで、まだ続きがあります。これは誤解というよりも、厳密な解釈と慣習との違いと言ったものでしょうか。“Ex Works”の原文を見てみましょう。

EXW – Ex Works
“Ex Works” means that the seller delivers when it places the goods at the disposal of the buyer at the seller’s premises or at another named place (i.e., works, factory, warehouse, etc.). The seller does not need to load the goods on any collecting vehicle, nor does it need to clear the goods for export, where such clearance is applicable.
(出典:INTERNATIONAL CHAMBER OF COMMERCE ウェブサイト)

下線部を意訳すると、“売主は貨物を集荷トラックに積み込む必要はなく、また、輸出貨物への通関手続きを行う必要もない”となり、“輸出通関手続きは買主が行う”という条件になっていることが分かります。

しかし、実際の貿易取引では、売主が売主の名義で輸出通関手続きを行っていることがほとんどです。理由は、買主が輸出通関手続きを行うこともできるのですが結構手間が掛かり難しいためで、また一方で、売主が売主の名義で輸出通関手続きを行った方が他の手続きとの兼ね合いより効率的であることもあります。

よって、”Ex Works”の正式な解釈では、“輸出通関手続きは買主が行う”という条件になっていますが、現在の商習慣上では、貿易条件がEx Worksであっても、売主と買主の合意の下、輸出通関手続きは売主が行うことがほとんどです。尚、売主が輸出通関手続きを行うと言っても、Ex Worksの貿易条件の通り買主のリスク負担の下で、売主が輸出通関手続きを行うことになります。

( 深堀り情報 )
では、”Ex Works”の正式な解釈で、“輸出通関手続きは買主が行う”にはどうすればよいのでしょうか? 日本からの輸出の場合、買主は、日本の通関業者などを“税関事務管理人”として任命し、税関への輸出通関手続きを買主の名義で行うことになります。それについて、次のように説明されています。

9601 日本に居住しない者が税関手続を行う場合の手続(カスタムスアンサー)
  日本に居住しない者が税関手続を行う場合は、自らの代わりに税関手続を行う税関事務管理人を定め、あらかじめ税関手続を行おうとする税関に所定の書面に必要事項を記載し、これを届け出る必要があります。
  この場合、税関事務管理人は税関への輸出入申告手続、検査の立会い、関税等の納付、税関が発する書類や還付金の受領等を日本に居住しない者の代理で行うこととなります。
  税関事務管理人は、本邦に住所又は居所(法人にあっては本店又は主たる事務所)を有する者であることが必要であり、また、税関事務管理人が行う税関手続の処理が通関業法第2条に規定する通関業務に該当する場合には、税関事務管理人は通関業の許可を受ける必要があります。(関税法第95条、通関業法第2条、第3条)
(出典:税関ウェブサイト)

以上


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