< 目次 >
(1)ATAカルネとは
(2)ATAカルネの役割
(3)ATAカルネの特徴
 
 
(1)ATAカルネとは

 
 “ATAカルネ”とは、あまり聞きなれない言葉かと思います。また、言葉からも何のことなのかさっぱり想像がつきにくいと思います。ということで、先にイメージを掴んで貰った方が分かり易いと思いますので、少々語弊はありますが分かりやすく言うと、“ATAカルネ”とは、通関手続きを行う時の“輸出申告書”又は“輸入(納税)申告書”の代わりになる書類”です。
 
通関手続きを行うには、基本的には、“輸出申告書”や“輸入(納税)申告書”に必要事項を記入して税関に提出して行うことになりますよね。3-1.通関手続きでは、次のように紹介しました。

また、輸出入の申告は、本来、輸出入者が行うべきですが、手続きが非常に煩雑で、法律等の専門的知識が必要なことから、一般的には、”通関業者”と呼ばれる税関への輸出入申告を代行する業者に手数料を払って、通関業務を委託することがほとんどです。ちなみに、その通関業者とはどんな業者かと言うと、例えば、”○○通運”や”△△エクスプレス”、”□□カーゴ”等の名前の業者です。それらのいくつかは聞いたことがありますよね。以下がイメージ図です。
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なお、輸出入者、または、通関業者にかかわらず、税関に輸出入の申告を行うには、基本的には、次の“輸出申告書”または“輸入(納税)申告書”を用いて行います
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しかし、現在では、通関業者が税関に輸出入の申告を行う場合には、一般的には、NACCS(読み方:ナックス、正式名称:輸出入・港湾関連情報処理システム)という税関とのオンラインシステムを用いて、“輸出申告書”または“輸入(納税)申告書”に記載する内容を入力して行っています。

その“輸出申告書”や“輸入(納税)申告書”の代わりになる書類が“ATAカルネ”です。
 
では、“ATAカルネ”と、“輸出申告書”や“輸入(納税)申告書”には、どのような違いがあるのでしょうか? 例えば、輸入の通関手続きを行う場合、“輸入(納税)申告書”に輸入する物品の内容を記入し関税等を納めないと輸入することができませんが、“ATAカルネ”を使用すると関税等を納めなくても輸入することができるようになります。つまり、“ATAカルネ”を使用して輸入の通関手続きを行うことで、本来納めるべき関税等が免除されます。

但し、“ATAカルネ”を使用できるには、いくつか条件がありますので、何でもかんでも“ATAカルネ”を使用して、輸入時の関税等をなくすことができる訳ではありません。それについては後述します。
 
ということで、まずは、“ATAカルネ”のイメージを掴んで貰えたかと思います。
 
 
(2)ATAカルネの役割

 
 ATAカルネについては、専門に取り扱っている公的な団体があり、それが“一般社団法人 日本商事仲裁協会”といわれる団体で、そのウェブサイトでは次のように紹介されています。

ATAカルネについて
  ATAカルネとは
    ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に基づき、職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を仕事のために外国へ一時的に持ち込む場合、外国の税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる通関手帳です。
    ATAカルネは外国への輸入税の支払いや保証金の提供が不要となる支払保証書でもあります。
    一通のATAカルネで通関手続きの異なる数か国の税関でも使用できるため、非常に便利な通関書類です。 
    A.T.A.とは、一時輸入を意味する
      Admission Temporaire(フランス語)
              Temporary Admission(英語)の
    頭文字の組合わせです。
    「カルネ」(CARNET:フランス語)とは手帳を意味します。
(出典:一般社団法人日本商事仲裁協会ウェブサイト)

また、ATAカルネの実物は、次のようなものです。
 
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(出典:一般社団法人日本商事仲裁協会ウェブサイト)
 
上の説明ではATAカルネの特徴が非常に簡潔に示されているのですが、簡潔過ぎてまだ具体的なイメージを掴みにくいかと思いますので、ある例を用いて見ていきましょう。
 
例えば、日本のある企業が自社製品を、外国で開催される展示会に出品して、展示会終了後にはすぐに日本に持ち帰るようなケースがあるとします(以下参考図)。
 
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ATAカルネを用いない場合は、日本企業は、日本から自社製品を輸出する際には日本の税関へ輸出申告書を用いて輸出の通関手続きを行い、外国で輸入する際には外国税関へ外国税関書式を用いて輸入の通関手続きを行うことになります。もちろん、外国での輸入の通関手続きの際には、関税等も納めることになります(以下参考図)。
 
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しかし、ATAカルネを用いた場合は、日本から自社製品を輸出する際には日本の税関へATAカルネを用いて輸出の通関手続きを行い、外国で輸入する際には外国税関へ同じATAカルネを用いて輸入の通関手続きを行うことになります。その際には、関税等は免除されます(以下参考図)。
 
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もちろん、外国から日本へ持ち帰る場合も、日本から外国へ持ち出した時と同じ考え方で取り扱うことができ、関税等が免除されます(以下参考図)。
 
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これで、ATAカルネの具体的なイメージを掴んで貰えたかと思いますので、詳細を見ていきましょう。
 
 
(3)ATAカルネの特徴
 
 それでは、(2)で紹介したATAカルネの特徴が簡潔に示された内容について、一つ一つ見ていきましょう。

ATAカルネについて
  ATAカルネとは
    ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に基づき、職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を仕事のために外国へ一時的に持ち込む場合、外国の税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる通関手帳です。
    ATAカルネは外国への輸入税の支払いや保証金の提供が不要となる支払保証書でもあります。
    一通のATAカルネで通関手続きの異なる数か国の税関でも使用できるため、非常に便利な通関書類です。 
    A.T.A.とは、一時輸入を意味する
       Admission  Temporaire(フランス語)
              Temporary Admission(英語)の
    頭文字の組合わせです。
    「カルネ」(CARNET:フランス語)とは手帳を意味します。
(出典:一般社団法人日本商事仲裁協会ウェブサイト)
 
  1. “ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に基づき”
     ATAカルネは“ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)”という条約で定められています。
     
  2. “職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を仕事のために外国へ一時的に持ち込む場合、外国の税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる”
     ATAカルネを用いて通関手続きが行えるのは、“職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を仕事のために外国へ一時的に持ち込む場合”に限られています。テレビ局の撮影隊が海外ロケで使用するテレビカメラ等の機材についてもよくATAカルネが使われます。
     
  3. “ATAカルネは外国への輸入税の支払いや保証金の提供が不要となる支払保証書”
     ATAカルネは“支払保証書”としての機能もあるため、関税等が免除されます。
     
  4. “一通のATAカルネで通関手続きの異なる数か国の税関でも使用できる”
     先の例で言うと、外国での展示会が終了した後、日本に持ち帰らずに、別の外国での展示会に出品するような場合にも、全く同じ手続きで取り扱いが行えます。但し、ATA条約に加盟している国に限り、このATAカルネを用いることができます。
     
  5. “A.T.A.とは、一時輸入を意味する Admission Temporaire(フランス語)、Temporary Admission(英語)の頭文字の組合わせです。「カルネ」(CARNET:フランス語)とは手帳を意味”
     1でも分かりますが、“ATAカルネ”とは、“物品の一時輸入のための通関手帳”という意味です。尚、通常の通関手続きにはインボイス等の関連資料が求められますが、“ATAカルネ”を用いて通関手続きを行う場合はインボイス等の関連資料は必要なく“ATAカルネ”だけで通関手続きを行うことができます
 
尚、このATAカルネは、専門に取り扱う公的団体の“一般社団法人 日本商事仲裁協会”に申請することで発給されます。 税関に申請して発給されるものではありません。
 
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ということで、ATAカルネが非常に便利なものであることは理解して貰えたかと思います。より詳細については一般社団法人日本商事仲裁協会のウェブサイトで紹介していますので見て貰えればと思います。

特に高価なもので職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を仕事のために外国へ一時的に持ち込むようなことがある場合には、活用されてみてはいかがでしょうか?
  
 
[まとめ]
  • “輸出申告書”や“輸入(納税)申告書”の代わりになる書類が“ATAカルネ”。
    “ATAカルネ”を使用して輸入の通関手続きを行うことで、本来納めるべき関税等が免除される。
  • ATAカルネを専門に取り扱っている公的な団体があり、“一般社団法人 日本商事仲裁協会”という団体である。
  •  ・“ATAカルネ”とは、“物品の一時輸入のための通関手帳”という意味。
    ・ATAカルネだけで通関手続きを行うことができる。
    ・ATAカルネは“ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)”という条約で定められている。
    ・ATAカルネを用いて通関手続きが行えるのは、“職業用具、商品見本、展示会への出品物などの物品を仕事のために外国へ一時的に持ち込む場合”に限られている。
    ・ATAカルネは“支払保証書”としての機能もあるため、関税等が免除される。
    ・外国での展示会が終了した後、日本に持ち帰らずに、別の外国での展示会に出品するような場合にも、全く同じ手続きで取り扱いが行える(但し、ATA条約に加盟している国に限る)。
    ・専門に取り扱う公的団体の“一般社団法人 日本商事仲裁協会”に申請することで発給される。
 

以上